カテゴリ: 投資雑感

自分のリスク許容度を大きく超えないようにするため定期的にポートフォリオのリバランスを行うことが推奨されています。

しかし、リバランスとは上がっている資産を売って下がっている資産を買うということなので資産形成期の人が上がっている株式を売ってしまうのはもったいなくもあります。

iDeCo口座ならスイッチングを行うことで非課税で売却可能ですが運用を始めたばかりの人では資産全体のリバランスに使えるほどiDeCoにお金を入れてない可能性は高いです。

特定口座で税金を払ってまでリバランスをするのももったいない話ですし…となったときに有効な手段がボーナス時にノーセルリバランスを行うことです。

ノーセルリバランスとはその名の通り売却ではなく買い増しによってリバランスを行います。

資産形成期の人は当たり前のように入金をしていると思うのであえて言うほどのことではありませんが、ボーナス時に行うと決めてしまうことで運用にかける作業を少し減らせるかもしれません。

運用資産が1,000万円で株式インデックス80%、現金20%という比率で保有している人がいたとします。

株式が20%上がっていた場合、資産は1,160万円となるため元の比率にするには株式を32万円分売却しなければなりません。

そこでボーナス時に例えば50万円入金した場合、資産1,210万円となるため8万円分だけ株式を購入し株式968万円、現金242万円で元の比率に戻すことができます。

大幅に株価が上がった(下がった)場合や資産がそれなりに増えてきた場合はボーナスでの入金では対応できなくなるかもしれませんが一考の余地はありそうです。

アメリカの経済学者であるウィリアム・シャープはCAPM(資本資産価格モデル)の提唱者であり1990年にノーベル経済学賞を受賞しています。

CAPMが正しいとするならば"株式市場そのものを保有することが最も効率の良いポートフォリオである"という結論に至るのですが、これがなかなか強力で60年近く前に生み出されたのに未だにこれを打ち破る理論は登場していません。

なぜ市場そのものを保有することが最も効率が良いのかですが、

上場企業全体の収益=株式を保有している全ての投資家の利益の総和となるので株式市場をまるごと保有するポートフォリオなら上場企業全体の収益と同じ比率の利益を得ることができます。

その結果、パッシブな投資家が得た利益の残りをアクティブな投資家が分け合う形になるのです。

アクティブな投資家たちはパッシブな投資家よりも特定の銘柄を選好するなど追加的なリスクを引き受けているにも関わらずアクティブな投資家全体でゼロサムゲーム…というか売買や信託報酬等の手数料を払うマイナスサムゲームを行っていることになり市場平均を上回ることができなくなります。

このアクティブな投資家全体ではインデックス投資家に勝てないと言うのはまさにその通りなのですが、個人にしろ機関にしろそれなりに勝ち続ける投資家は存在します。

ただ、勝ち続ける投資家がいれば勝ち組が得た利益分だけ負ける投資家もいないと成り立たないのがアクティブ運用の世界です。

アクティブな投資家がいることで株価はそれなりに正しく値付けされるのですが、基本的に人間は本能のままにトレードをすれば負けるようにできているので最終的にはほとんどの人が負けてしまうという悲惨なことが起こってしまうのです。

同じ市場にインデックス投資家とアクティブな投資家がいるためどちらも同じ土俵で戦っているように見えますが実は全く違うゲームをしていたんですね。

市場全体が成長しなくなってもアクティブな投資家なら勝てると考える人もいるかもしれませんが、市場が成長しない世界線ではアクティブな投資家たちで分け合うためのパイは非常に小さくなるため極々一部の人間以外は利益を出すことができなくなります。

あえて百戦錬磨のプロが集まるアクティブな運用で戦おうとすることを否定するつもりはありませんが、パッシブな運用(インデックス投資)を行って将来的に十分なリターンが得られると想定するのであればあえてそれ以上のリスクを背負う意味はありません。

将来的にパッシブな運用では利益が得られなくなると予想するのであればアクティブな運用云々の前に「そもそも株式投資をするべきなのか?」から考えなくてはなりません。

結局、「素人が株式の未来に期待するならインデックスファンド買っとけ」という当たり前の話になっちゃうのです。

トマ・ピケティは「21世紀の資本」で r > g という不等式を示しました。

r は資本収益率、g は経済成長率です。

ピケティは過去の膨大な資料から歴史的に資本(株式や不動産等の収益を生むもの)から得られる収益は経済成長により上昇する労働所得を上回っていたことを発見しました。

そして、その傾向は今後さらに加速していくと予想しています。

大多数のしがない労働者には絶望的な現実ですが、今は誰でも簡単に少額で世界中の大企業に投資することができる時代なので立ち回り次第では資本家の側に回ることも可能となります。

労働収入だけではお先真っ暗という人は少しだけ倹約して世界の経済成長に賭けてみるのも良いのかもしれませんね。


超高齢化社会の到来で動ける老人にら働いてもらわなければならない世の中になっているわけですが、本音を言えば老人には働いて欲しくないんですよね。

例えばなんですけど、私はたまにタクシーに乗るんですよ。

で、よぼよぼのおじいちゃんが運転してたりすると「うわ、マジかよ…」って思うわけです。

実際事故も多発していて、いつ、このタクシーが殺人兵器になってしまうのかと戦々恐々としてしまいます。

コンビニのレジも老人が立っていると「え、大丈夫…?」と不安になります。

普通に会計するだけならギリ大丈夫だと思うんですけど荷物を送ったり粗大ゴミシールを買おうとしたりするとまずすんなりとは行かないのだろうなと身構えてしまいます。

タクシーやコンビニに限らず、そんな感じで世の中に老人の就労者が多数現れると社会全体のクオリティが低下していく一方だなと感じてしまうわけです。

もちろん、長年の経験が必要なスキルというのもあってそういうスキルを発揮できる方には是非とも働いていただきたいわけですが、そういう方っておそらく全体の1割もいないんですよね。

「お前も老人になったらそう言われるんだぞ」

というお声をいただきそうですが、もちろんそう言われると思っています。

だからこそ私は老人になったら働かずにひっそりと暮らしたいなと思っていますし、もし私のスキルを必要とされても自分に果たせる仕事なのかを考えて引き受けたいと思っています。

「お金がないから仕事をする」という理由では働きたくないんですよね。

そのためにも老後の資金はしっかり貯めておきましょうってのが大切になってくるわけで、現役世代の人は何らかの手段で今から老後に備えておいた方が良いです。

幸運なことにiDeCoは掛け金の全額が所得控除の対象となり、運用益は非課税ですし新NISAでは1人1,800万円の非課税枠ができるなど、制度がかなり充実しているので始めるハードルはそんなに高くないんじゃないですかね。

なんだかんだ言っても「理屈ではわかっているが何もやらない人」が9割以上だと思うので、結局「否応なしに働かざるを得ない老人」の数は今後も増え続ける一方になりそうですが。

以前の記事では新興国株に投資しない理由を書きました。


これは新興国の成長やマーケットをあまり信じていないというのが大きな理由ですが、ではなぜ先進国株式ではなく主に米国株に投資しているのかを書いてみたいと思います。

現在、確定拠出年金の絡みでMSCI コクサイに連動するインデックスファンドも購入していますが主な投資対象はS&P500に連動する米国株式インデックスです。

「米国一国への集中投資は危険」
「歴史を見ればどんな国も必ず衰退するので米国一強時代もいつかは終わる」

などとしたり顔で言われることは多いのですがそれでも米株インデックスを選択する理由があります。

それは米国一強時代はもうしばらく続くだろうと予想しているからです。

この"しばらく"というのが重要なのですがそもそも投資を行う場合、いつかは利確または損切りをする必要があります。(株は売らずに配当金だけもらい続けるという人もいると思いますが…)

一度に全て売却なのか定率で売却なのかなど色々あるとは思いますが将来的には"利益が出ている"という前提で投資していますし今はガチホしていてもいつかは売却していくわけです。

なので米国一強時代があと50年も100年も続く必要はなくてせいぜい20年か30年でも米国経済が今のように成長を続ければ十分なリターンは得られると思っています。

仮に世界一位の座から転落してもそこでいきなり市場が終了するというわけでもありません。

中国やインドに追い抜かれてGDP世界二位や三位になったとしても一定程度の経済成長は続けていくはずなので自分が長期的に期待するリターン程度は得られるのではないかと考えています。

いくら新興国は人口も増えて経済成長著しいとはいえ自国でスマートフォンを作れる国すらほとんど登場しない状況を見ると先進国の影響力が低下する可能性は低いと思われます。

新興国も国民が豊かになれば最新の家電や自動車、ブランド物の衣服やアクセサリーを手に入れたくなりますし、日用品にもある程度のブランドを求めることになるでしょう。

それらを支える基盤技術はそのほとんどをアメリカを始めとした先進国が保有しているので結局輸入に頼るしかありません。

まるで旧世界の植民地政策が形を変えて残っているかのようですね。


以前から「20xx年には中国が米国を追い抜く」と言われていたりするのですが今のところ追い抜く気配は感じられないです。

最近出されたレポートでは保守的な予測であっても2035年までに中国が米国のGDPを上回ることはないとされました。

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2036年以降も米中の差が逆転する可能性は低そうです。

旺盛な自社株買いや配当などの株主還元に力を入れているところも重要です。

S&P500構成企業の2021年の自社株買いは実に0.88兆ドルとなりました。

現在のS&P500全体の時価総額が約35兆ドルなので2.5%の自社株買いが行われたことになります。

配当と合わせると株主還元率は4%以上になり、これほど株主還元に力を入れている国はアメリカ以外には無いでしょう。


ということで米国株インデックスに力を入れている理由をつらつらと書きましたが、いざ蓋を開けてみればオルカンのほうが良かったとかそもそも株式投資なんかしないほうが良かったとなる可能性もありますので5年後、10年後にどうなっているのか楽しみにしておこうと思います。

以前、ツイッターで

「インデックスファンドを買っているだけで儲かった時代は終わりました。これからは銘柄選択に力を入れ優良な個別株でポートフォリオを組みましょう」

というツイートを目撃しました。

このツイートに対して熱心な信徒が「自分もそう思います!」と追従し、最終的にはサロンの会員になるためにお布施を包んでいました。

この方はメリーさんみたいな名前のオバサンでしたが本当に個別株で稼げるノウハウをお持ちならご丁寧にそのノウハウを広める理由はありませんよね。

わざわざ素人から小銭を徴収して儲けを分散させるくらいなら自分とその身内だけで儲ければ良いだけの話ですから。

ワンルームマンション投資然り、有料サロン然りでこれと似たような話を聞いたことがある人はたくさんいるのかなと思います。

ただひたすらに魑魅魍魎が跋扈する投資の世界ではこのような例は枚挙にいとまがありません。

一見もっともらしい理由をつけられると、ちょっと考えればわかるようなことすら思考放棄してしまう情弱は一方的に金を搾取され続ける恐ろしい世界なのです。

サロンオバサンのことをボロクソに言いましたが私は個別株投資自体を否定するつもりはありません。

私もまだちょこちょこと個別株投資を楽しんでいますしバフェットを始めとして非常に優れた成績を残している投資家も数多くいるからです。

「もしかしたら自分もその枠に入れるかも…」と考えて挑戦することが悪だとは思えないです。

失敗しても若いうちならいくらでもやり直しはできますし色々な勉強もできるので趣味としては非常に面白いのではないでしょうか。

まあ有料サロンに入っちゃうような人は手を出さないほうが良いのは間違いありませんが…


さて、このオバサンの言うインデックスファンドでは儲からない時代が来た場合、個別株で勝つことが本当に可能なのでしょうか。

インデックスファンドとは市場をまるごと保有するファンドのことです。

そのリターンは長期的に見ると経済成長と連動します。

そのインデックスが全く上昇しない、もしくは下がり続けるばかりの未来とはつまり資本主義社会の崩壊かその一歩手前くらいの世界である可能性が高いです。

そうなると、当然既存の大型株には期待できないのでトリッキーな中小型株を狙っていくことになると思います。

しかし平時でも中小型株は業績がいまいち、下げ相場ではとことん叩き売られるものが多い中で市場が成長しない世界線でもしっかり利益を出し、株価を上げることのできるような銘柄などいくつあるのでしょうか。

リーマンショックのときにも2倍、3倍になった銘柄はありますがそこをピンポイントで当てにいけるような再現性の高い手法は存在しません。

逆に2分の1、3分の1になった銘柄のほうが圧倒的に多いので下手に個別株を触る方が損失が大きくなる人が大半でしょう。

市場が成長しない世界が来ると予想するなら個別株投資かインデックス投資かという議論は全くの無意味で株式投資なんかやめてしまうのが正解なのです。

今後、非常に致死性の高いウイルスのまん延や核戦争、巨大隕石の衝突等により人類文明が後退し、株式市場が壊滅的なダメージを受けると予想するのであれば個別株を選ぶより核シェルターでも設置して非常食やサバイバルキットでも溜め込んでおくほうがよほどマシです。

結局オバサンは市場がある程度の成長を続けるという前提で、さらに「それを上回るパフォーマンスを出す方法を教えますよ」と言っているのに過ぎないのです。

繰り返しになりますが現実的に考えてそれが可能ならサロンで小銭稼ぎをするよりも自分で運用するとかファンドを立ち上げるとかどこかのファンドマネージャーになるとかしたほうが遥かに儲かるし社会貢献もできそうなものですがあえてそれをやらない理由はなんなのでしょうね。



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